海の幸は誰のもの?
【法律歳時記】レジャーを台無しにしないための法律相談
Q 肝試しで、廃墟となった病院に侵入!証拠として、中に残されていた花瓶を持ち出した…。このまま貰っても良い?
「住居等侵入罪(刑法130条)の対象は、『人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船』ですので、廃墟となった病院に管理者がいなければ、人の看守する建造物ではないとして、住居等侵入罪は成立しない可能性があります。ただし、管理されていなくても所有者はいますので、『人の看守する』に該当する可能性もあり、一概には言えずケースバイケースの判断となりますので、安易に侵入してはいけません。
そして、軽犯罪法1条32号にも該当する可能性があります。
軽犯罪法1条32号は、『入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者』に適用されます。
『入ることを禁じた場所』とは、柵等で容易に入ることができなくしている場所や、看板等で立入禁止を明示している場所を指します。したがって、これらに該当する廃墟に無断で立ち入った場合には、軽犯罪法1条32号が成立することになります。
次に、証拠として中に残されていたものを持ち出す行為が窃盗罪に該当するかという点について考えましょう。まず、窃盗罪は『他人の財物』を『窃取した』ときに成立します。
『他人の財物』とは、誰かが占有している物、つまり誰かが事実上支配している物を指しますので、廃墟となった病院に残された花瓶を誰かが事実上支配していない限り、窃盗罪の対象とはならないことになります。
しかし、廃墟となった病院にも所有者はいますので、その所有者の事実上の支配が及んでいる可能性は十分あります。
そして、病院の所有者の意思に反して花瓶の占有を自己に移しているため、『窃取した』ことになり、窃盗罪が成立する可能性があります。
また、仮に、病院の所有者の花瓶に対する占有が認められなかったとしても、花瓶の所有者が所有権を放棄していない限り、遺失物等横領罪が成立します。廃墟となった病院内の物について、所有者が所有権を放棄していない場合は、器物損壊罪が成立します。
一見すると誰も管理していなさそうな廃墟であっても、様々な犯罪が成立する可能性があります。また、仮に犯罪が成立しなくとも、古い建物などは事故に遭う危険性も高いものです。夏の思い出を台無しにしないためにも、肝試しに廃墟へ行くことは、あまりおススメできません。」(同弁護士)
【お話をうかがった方】
岩沙 好幸(いわさ よしゆき)さん
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。
近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。
http://ameblo.jp/yoshiyuki-iwasa/